ウパニシャッド
提供: 新纂浄土宗大辞典
ウパニシャッド/Ⓢupaniṣad
ヴェーダ聖典を構成する四部門のうち、森羅万象について一元的な根源を探求する聖典群のこと。「奥義書」と邦訳される。ウパニシャッドと称するものは多数に上るが、それらのうち成立も古く重要な内容を有する一四篇が代表的なものとされ、古代ウパニシャッドと呼ばれる。その成立は紀元前五〇〇年ごろを中心とした前後数百年の幅が想定されるが、代表的な教義としては、業による輪廻の思想や梵我一如の思想が知られている。業と輪廻の思想は、善悪の行為の果報として天・人・動物・昆虫などといった境涯へ生まれ変わり生死の苦しみを繰り返すと説き、その後のインド思想の根幹となって仏教などに大きな影響を与えた。梵我一如の思想は、変化して止まない森羅万象に唯一不変の根源的な実体(梵—ブラフマン)を見出し、それが人間個人の根源的な実体(我—アートマン)と一体であると体得することにより生死からの解脱を目指す。その際の修行として精神を一点に集中するヨーガの観法を尊重した。こうした修行法もまた仏教に影響を与えたと考えられる。
【参考】辻直四郎『インド文明の曙—ヴェーダとウパニシャッド—』(岩波書店、一九六七)、松濤誠達『人類の知的遺産2 ウパニシャッドの哲人』(講談社、一九八〇)
【執筆者:袖山榮輝】