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選択要決

提供: 新纂浄土宗大辞典

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せんちゃくようけつ/選択要決

一巻。撰者・成立年次不明。本書の序に本書は法然門下の異端者が『選択集』を難破した一〇箇条に対して一つひとつ反論した書であると述べているが、実際には鎮西流の立場から一念義西山流を批判し、その正統性を主張した書。本書の写本に養楽寺本、神興本、聖徳寺本の三種が現存する。撰者については源智説、信寂説、湛空説の三説があるが、いずれも十分な根拠に乏しい。『選択集』に対する十難とは次のようである。①『選択集』を偽作とする批判。②『選択集』を在家向けの書で、いまだ往生浄土道理が示されていないとする批判。③『選択集』は浅機のための書であって、深義は説かれていないとする批判。文中に難者は無文有義の解釈を展開していると反論しているので、西山流からの批難かと推定できる。④法然以後の浄土教学が『選択集』そのものよりも、より深まってきているという批判。⑤『選択集』を本書(『観経疏』)に誘引せしめる役割を荷う末書として低く見る批判。この思想は西山派西谷義の大成者行観の『選択集秘鈔』の解釈と一致する。⑥『選択集』は起行の分際を明らかにするのみで、いまだ安心の法門は明らかではないとする批判。文中に一念義幸西がよく依用する「仏智不思議智」「方便・真実」等の語句を引用することから、難者は幸西である可能性が高い。⑦『選択集』は行者の功をもって往生の行とし、いまだ正因正行の法門を明かさないとする批判。文中に「正因正行」「能所一体」「事相教門」等の語、および往生正覚一体成就の思想が見られることから、難者は西山家を意味すると断定できる。⑧『選択集』に説く宗義はいまだ未熟であって、当世の宗義の方が円熟しているとする批判。⑨『選択集』の教えはただ随機の説のみであって、その宗義は我ひとり相伝するとする批判。文中の反論の言葉の中に「年年に義を改め、時時に言を易る」(浄全七・一八二下)とあることから、難者が西山家であることは明らかである。⑩『選択集』は往生浄土については述べているが、成仏については何等述べるところがないとする批判。文中に「顕行・示観」の語、および「通三身門外の一報身」の思想、法然撰述時の勘文の役批判等の記述があることから、難者は西山家であろう。本書に引用された典籍などから、本書の成立年時を推定すると、その下限は行観が『選択集秘鈔』を撰述したとされる永仁年間(一二九三—一二九九)以後か、あるいは行観以降の成立とされる西山家の事相教旨の典籍(たとえば、『選択密要決』等)の成立以後であろう。


【所収】浄全七


【参考】廣川堯敏「伝源智述『選択要決』の成立をめぐる諸問題」(戸松教授古稀記念『浄土教論集』大東出版社、一九八七)、同「伝源智述『選択要決』の成立をめぐる諸問題㈡」(正大紀要七三、一九八八)


【執筆者:廣川堯敏】