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智光曼陀羅

提供: 新纂浄土宗大辞典

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ちこうまんだら/智光曼陀羅

奈良元興寺がんごうじの学僧である智光が感得した図絵。浄土三曼陀羅の一つ。『日本往生極楽記』によると、親しい友であった頼光が往生した極楽を夢の中で見た智光は、自分も往生したいと願った。そこで仏は極楽往生のためには、仏の浄土荘厳を知るべしと教えた。智光の求めに応じて、仏は右手の掌に小浄土を示現した。夢さめて、その浄土を画工に描かせた。智光はこれを観想して往生を果たしたという。観徹の『智光曼荼羅合讃』によれば、その大きさは一尺二寸ほどで、簡略な図相である。原本は宝徳三年(一四五一)に焼失した。現存する智光曼陀羅は板絵本と流布本があり、他に異相本がある。板絵本の阿弥陀仏合掌しており、流布本は転法輪印である(共に元興寺極楽坊蔵)。平安時代末の『覚禅鈔』七の図には、宝地段・宝樹段・宝池段・宝楼段・三尊段・虚空段がある。当麻・清海の二曼陀羅にくらべると、外辺に図絵がないのを特徴とし、浄土に二比丘びくを描く。中世末期までは二つの系統であったが、近世初頭になり、別の異相智光曼陀羅の図絵(南都念仏寺蔵)が出てきた。版木に「智光所感如来掌中示現曼陀羅」と刻まれている。現在この版木は京都三条檀王法林寺に所蔵する。図絵は、浄土荘厳阿弥陀三尊および諸菩薩娑婆来迎と上中下の三段に分けることができる。下段は左に持仏堂、炊殿、居所があり、桜木と松がある。居所に白装束の主人が坐す。右斜め上より一仏十七菩薩化仏らの来迎がある。中段は転法輪印の阿弥陀仏、観音・勢至の二菩薩が坐し、諸菩薩が囲むように坐して合掌礼拝する。上段は宝池に蓮華化生や化鳥、虚空に飛天・楽器があり華麗な浄土荘厳である。図絵の両側に各二行の縁起文があり、右二行は智光説話、左二行は浄土教が広まり異相智光曼陀羅の出来た事情を刻む。


【資料】『覚禅鈔』七


【参考】元興寺仏教民俗資料刊行会編『智光曼荼羅』(学術書出版会、一九六九)、元興寺文化財研究所編『日本浄土曼荼羅の研究』(中央公論美術出版、一九八七)【図版】巻末付録


【参照項目】➡浄土三曼陀羅清海曼陀羅当麻曼陀羅智光曼荼羅合讃


【執筆者:塩竈義弘】