仏国土
提供: 新纂浄土宗大辞典
ぶっこくど/仏国土
仏が住在し衆生を教化する国土のこと。あるいは略して仏土ともいい、清浄な性質をそなえていることから清浄国土、浄土ともいう。また菩薩が理想世界を実現するために誓願を立てそれを完成し、建設した国土のこと。Ⓢbuddha-kṣetraⓈkṣetra-pariśuddhi。『摩訶般若波羅蜜経』の習応品に説く「仏土を浄めて衆生を成就す」(正蔵八・二二四下)は菩薩の空の実践のあり方を示したもので、仏と成るために国土を浄め衆生を済度するという意味である。部派仏教の説一切有部では仏国土を釈尊が生誕し、仏陀となったこの娑婆世界に限っており、一仏には一国土しかありえないと考えた。大乗仏教では娑婆世界以外の他方に複数かつ無量の仏国土があり、それぞれに仏が住在して活動していると説いている。法蔵菩薩が四八の誓願を完成して建設した極楽浄土もその一で、他に阿閦仏の妙喜世界、薬師仏の浄瑠璃浄土などもある。仏陀の身体とその所在に対する討究は仏身仏土論と呼ばれ論書に見られる。中国の三論宗や天台宗では、仏土は仏が衆生を教化する場所と考える立場から、教化の対象となる凡夫と聖者、声聞・縁覚・菩薩に応じた国土の区別とその内容を論じている。法相宗では四種の仏身に対する法性土・自受用土・他受用土・変化土の四土を、浄土教では法報応の三身に対して法性土・報身土・応身土を説いている。法然は『要義問答』で十方に多くの浄土があるが、どの浄土に往生することを願うべきかという質問に「極楽この土に縁深し。弥陀は有縁の教主なり。宿因の故、本願の故、ただ西方を欣わせたまうべきとぞ覚えそうろう」(聖典四・三八〇/昭法全六一六)とのべる。道光の『無量寿経鈔』三には声聞無数願の注釈でさまざまな仏土を列し「あるは仏土あり。斉しく三乗あってみなことごとく成仏す。((阿弥)佗力の報土なり。)法蔵菩薩すでに光寿無量の願を発す。これはこれ報身、なんぞ二乗あらん。しかりといえども他方の小聖を引いて速かに成仏せしめんがためにこの願を選択して小聖を摂するなり」(浄全一四・八五上)と阿弥陀仏の浄土の特色を説いている。
【執筆者:大南龍昇】