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法事讃行法

提供: 新纂浄土宗大辞典

ほうじさんぎょうほう/法事讃行法

法事讃』に基づき修する行法のこと。『徒然草』には、「六時礼讃は、法然上人弟子安楽といひける僧、経文を集めて作りて勤めにしけり。その後、太秦うずまさ善観房といふ僧、博士ふしはかせを定めて声明になせり。一念念仏の最初なり。後嵯峨院の御代(一二四二—一二四六)より始まれり。法事讃も、同じく善観房始めたるなり」(第二二七段)とあり、古くから修されていたことが分かる。『法事讃』は『往生礼讃』などと共に浄土往生の実践を説く行儀分にあたり、その行法は『阿弥陀経』の読誦を中心として「転経てんぎょう行道」と「懺悔」を主とした法要である。導師・左脇導師・右脇導師維那・左召請人しょうしょうにん・右召請人を役者としてたてて高座と下座とのやりとりで行う。文化六年(一八〇九)刊華頂版を底本とした次第では、上巻では、入堂して、まず維那句頭により「奉請四天王文」を唱える。次に三拝し、導師は「転経行道願往生浄土法事讃」と標題を拝読する。続いて右召請人により「般舟三昧楽」以下讃文を唱え、右式衆は「願往生」「無量楽」を同唱し、左側もこれに準ずる。維那句頭三宝敬礼した後、導師が「願往生」の讃文を訓読し、維那句頭で讃文を唱和する。続いて導師の「一切恭敬 道場衆等 各執香華 如法行道」の発声の後、「行道讃梵偈」に従い三奉請散華し、行道七周仏前に至って散華する。行道の後、左右脇導師により「願往生」讃文の訓読、左右召請人句頭により左右式衆唱和し、最後に至心懺悔して阿弥陀仏帰命し奉ると唱える。下巻では『阿弥陀経』を一七段に分け、導師が経を一段唱えるごとに左右脇導師訓読と左右召請人の導きにより「願往生」の文を繰り返す。本来ならば「般舟三昧楽」「願往生」「無量楽」の後讃を仏前で唱え、七礼をもって終わるのであるが、以下「摂益文」「念仏一会」と次第し、正宗分の最後に維那、左右召請人により「送経文」を問答し、十念して下高座三拝して終える。通常は省略して勤められる。増上寺御忌日中法要では、導師の標題の後、左右脇導師による道場散華が行われ、次に「奉請四天王文」を唱え、法事讃を勤めている。


【執筆者:中野孝昭】