頭陀
提供: 新纂浄土宗大辞典
ずだ/頭陀
煩悩を振り払い除くこと、およびそのための修行徳目のこと。ⓈⓅdhūta、dhutaの音写語。杜多、杜荼などと音写し、抖擻、修治、棄除などと訳す。原語は語根Ⓢ√dhū(振り払う)の過去分詞形で、煩悩の塵垢を振り払うために行う、衣・食・住に関する貪りなどを振り払う特に厳しい出家生活法のこと。諸律蔵で言及される「四依(糞掃衣・乞食・樹下坐・腐爛薬)」(『四分律』三五、正蔵二二・八一七下)の中の腐爛薬を除く衣食住の三項目が基本となっている。諸部派・大乗の文献で項目や配列に若干の相違があるが、一二または一三の実践項目を頭陀支という。代表的な頭陀支として、糞掃衣(捨てられた布片を綴りあわせて作られた衣を着用する)、但三衣(大衣・上衣・中着衣の三衣のみを着用する)、持毳衣(毛織物で作った衣のみを保持する)、常乞食(托鉢乞食のみによって食物を得る)、次第乞食(行乞時には貧富好悪を選別せず、順次に行乞する)、一食法(一日一食のみ食する)、節量食(食を少なく、過食をしない)、時後不食(食事の後で再び食事・飲み物を摂ってはいけない)、阿蘭若住(人里離れたところを住所とする)、樹下坐(樹の下を住所とする)、露地坐(常に屋外を住所とする)、塚間住(塚墓つまり墓所の中やその近くを住所とする)、随得敷具(与えられたいかなる臥坐具・住所も厭わず享受する)、常坐不臥(常に坐して横臥しない)などがある。頭陀の修行者が常に携行する持ち物を頭陀十八物といい、持ち物を入れるために首に掛ける袋を頭陀袋という。これが転じて、死者を葬る際に、死出の旅路の用具を入れる袋も頭陀袋と呼ばれる。
【参考】水野弘元「大乗経典と部派仏教との関係」(宮本正尊編『大乗仏教の成立史的研究』三省堂、一九五四)、阿部慈園『頭陀の研究』(春秋社、二〇〇一)
【参照項目】➡頭陀袋
【執筆者:榎本正明】