輪廻
提供: 新纂浄土宗大辞典
りんね/輪廻
原語はⓈⓅsaṃsāraであり、「流れること」が原意である。仏教の興起以前に、インドでは生まれた者は生死を繰り返すという考えがあり、仏教もこれを踏襲した。車輪が廻ってとどまることを知らないことになぞらえ「輪廻」とされる。釈尊自身が輪廻を認めたかどうかは明確ではないが、最近の研究によれば、釈尊は輪廻に対して否定的であったのではないかと言われている。しかしながら、仏滅後の仏教教団は明らかに輪廻を認め、輪廻を前提として教理を体系化していった。仏教の世界観によれば、輪廻の世界は大きく無色界・色界・欲界という三つに分類され、欲界の中に六道(六趣)があるとされる。六道とは、下から地獄・餓鬼・畜生・阿修羅・人・天であるが、この輪廻説に業思想が加わり、この世で善業を行えば、死後、善趣(人・天)に生まれ、悪業を行えば、死後、悪趣(地獄・餓鬼・畜生・阿修羅)に生まれると考えられるようになった。
【参考】並川孝儀『ゴータマ・ブッダ考』(大蔵出版、二〇〇五)
【執筆者:平岡聡】