洪鐘
提供: 新纂浄土宗大辞典
こうしょう/洪鐘
寺院の鐘楼に懸吊され、時などを知らせるために撞木で打ち鳴らす大形の鐘。釣鐘・大鐘・梵鐘ともいう。法要の勤修を告げるために撞く。洪鐘の原形は、中国の殷、周の時代に楽器として造られたと考えられ、朝鮮においても古くから優秀な鐘が鋳造された。日本に伝来して現在国宝に指定されているものも多く『日本書紀』の欽明天皇二三年(五六二)に、銅鏤鐘三口を大伴狭手彦が高句麗から持ち帰ったとある。洪鐘は①法要のとき、②時報(時鐘)、③除夜(除日の夜)、④非常のときなどに撞く。法要のときは、まず捨鐘三下し、「洪鐘偈」を唱え、その後、同じ間隔、同じ音量で十八下し、やや間をおいて息椎二下を続けて撞く。時報(時鐘)、時刻を知らせるには、明け六つなど昔の時刻を知らせる方法によって、その数を打っていた。除夜(除日の夜)は百八下で、一般には百八煩悩を断絶して次の新年を迎えるためとされている。非常の時は早鐘といい、間断なく乱打する。廊鐘は洪鐘の小型の部に属し、知恩院の集会堂と御影堂(大殿)の渡り廊下の中程に掛けられている。以上のように場合によって洪鐘の撞き方は異なる。
【執筆者:西山精司】