器世間
提供: 新纂浄土宗大辞典
きせけん/器世間
衆生が住む世界、あらゆる生き物が活動する場としての環境世界のこと。Ⓢbhājana-loka。器世界とも訳される。器世間とは、個々の生き物が生活し、あるいは有情が輪廻する衆生世間(有情世間)を含むもので、器世間は環境世界、衆生世間は生活世界ということができよう。衆生は五趣(あるいは六趣)の境涯を輪廻するとされるが、その境涯は器世間の一部である。『俱舎論』などによれば、この世界の最下層は風輪という風の層であり、その上に水の層(水輪)、金の層(金輪)がある。この金の層が我々の生活する大地と考えられている。そして、そこには須弥山があり、その上空に神々の住居が、また地下には地獄が存在する。我々が輪廻しうる範囲は、このような地獄から須弥山上空の神々の世界までであり、これを衆生世間という。厳密に器世間といえば、この有情世間に風輪を加えたものである。またこの器世間は衆生の業によって形成され、それが尽きることで破滅していくと考えられており、この形成と破滅は無限に繰り返されるものとされる。
【資料】『俱舎論』
【執筆者:石田一裕】