十四行偈
提供: 新纂浄土宗大辞典
じゅうしぎょうげ/十四行偈
善導の『観経疏』の冒頭に、『観経疏』全体の総序的な存在として説示されている五言四偈、十四行から成る偈頌のこと。偈頌冒頭に善導は「まず大衆を勧めて願を発して三宝に帰せしむ」(聖典二・一五九/浄全二・一上)と説き、この偈頌が一切衆生に対して願往生心を喚起させるとともに、一切衆生が一切三宝に帰依することを目的としている。内容的には第一頌と第二頌で総論を、第三頌から第九頌で一切三宝への帰依を、第一〇頌から第一四頌で善導独自の阿弥陀仏信仰を端的に説示している。特に第一二頌において「我れ、菩薩蔵、頓教一乗海に依って、偈を説いて、三宝に帰して、仏心と相応せん」(聖典二・一六〇/浄全二・一上)と説き、この十四行偈、ひいては善導自身が提示する阿弥陀仏信仰が菩薩蔵であり頓教であり一乗海であることを主張するとともに、仏心と完全に一致するものであることを主張している。また第一三頌では「浄土門」の存在が説示され、第一四頌ではこの説偈の功徳によって一切衆生が極楽世界に往生することが回向されている。なお、この十四行偈は増上寺において夕方の勤行や元旦の三段式などでも使用されているが、これは十四行偈の存在を重要視した椎尾弁匡の指示によるものと考えられる。近年、龍門石窟より、善導入滅直後に彫られたものが発見された。
【参考】倉本尚徳「龍門北朝隋唐造像銘に見る浄土信仰の変容」(『東アジア仏教学術論集』二、二〇一四)
【執筆者:柴田泰山】