化身
提供: 新纂浄土宗大辞典
けしん/化身
仏・菩薩が衆生を救済利益するためにこの世に変化して現れ出た身形であり、二身、三身、四身論などの仏身の一つ。Ⓢnirmāṇa-kāya。各経論で訳語が一定しておらず、変化身、応化身、化身仏、化仏とも表記される。『大智度論』などの二身論(真身・化身)では三十二相八十種好を具足する仏の生身であり、八相成道の身のことをいう。三身論(法身・報身・応身)における応身もほぼ同意であるが、真諦訳『摂大乗論』(自性身・応身・化身)や『金光明経』(法身・応身・化身)のように応身と化身が区別される場合もある。『摂大乗論』の応身は報身と同格であり、『金光明経』の応身は仏の姿を現し、化身は仏以外の人・天・竜・鬼などの姿を現して衆生を教化するという。『観経』真身観では「無量寿仏の化身無数にして、観世音・大勢至とともに常にこの行人の所に来至す」(聖典一・三〇五/浄全一・四六)と真身の分身化現としての化身が説かれている。法然は『逆修説法』で真身・化身の二身論を説き、阿弥陀仏の化身について「無にして欻ち有なるを化と云う。機に随い時に応じて身量を現ずるに大小不同なり」(昭法全二三三)といい、衆生の機根に応じて大小さまざまな身量でにわかに現れる仏身と解釈し、さらに『観経』を典拠として円光の化仏・摂取不捨の化仏・来迎引接の化仏の三義を挙げている。
【参考】神子上恵龍『弥陀身土思想の展開』(永田文昌堂、一九五〇)、長尾雅人「仏身論をめぐりて」(『哲学研究』五二一、一九七一)、曽和義宏「阿弥陀仏の仏身規定をめぐって」(『浄土宗学研究』二六、二〇〇〇)
【執筆者:工藤量導】