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円頓戒概論

提供: 新纂浄土宗大辞典

えんどんかいがいろん/円頓戒概論

恵谷隆戒著。昭和一二年(一九三七)五月、大東出版社刊。円頓戒の戒学に関して、従来、訓詁的な注釈書が豊富であったのに対して概要を示すものが乏しかった経緯をかんがみて、初学者用として著述された概説書。内容は、序論において戒の意義、大乗戒の起源と発達を示す。そして、本論は第一篇円頓戒史要と第二篇円頓戒要論に大別し、第一篇では中国の後漢時代頃以降と日本に伝来してから江戸時代末葉頃までの戒律、中でも円頓戒に関して興隆に寄与した人物を中心にその行実を挙げ、思潮等の推移を示し、第二篇では円頓戒の意義、所依の経疏、相承授戒の形式、戒行、戒体持戒規範について綱要を記している。各章・節に詳細な注も付されており、大乗戒学の淵源から円頓戒への変遷等、戒学の大要を把握するのに有意義な書といえる。付録として、天台円教菩薩戒相承血脈譜、天台円教菩薩戒相承師資血脈譜、珍養の広血脈、元応寺流血脈を掲載する。改訂版では、文章の表現を現代調に改め、誤植を訂正し、さらに大きく補足されている部分としては、初版の本論第一篇第一章に第四節「唐宋時代の梵網戒研究」を、そして、第一篇第五章と第六章の間に一章を設けて「鎌倉時代南都梵網戒の興隆」を加える。巻末に索引(書名、寺院名、人名)を付している。昭和五三年(一九七八)改訂版刊行(大東出版社)。


【執筆者:髙津晴生】