三分科経
提供: 新纂浄土宗大辞典
さんぶんかきょう/三分科経
経典を註釈するにあたり、序分・正宗分・流通分の三つの段に分けること。序分は序説、前書にあたり、その経が説かれた由来をあかす部分であり、諸経に共通する通序とその経特有の別序がある。正宗分は本論にあたる。流通分はその経の結びであり、経典の利益を明かし、普及を勧める結語である。これは経典解釈の方法であるため、当然解釈する人師によってその分段の仕方には異なりがある。この三分科経の成立について、隋代頃から、東晋の道安による創始であるという説が流布し、吉蔵の『仁王般若経疏』上一(正蔵三三・三一五下)などに記され、また良忠の『伝通記』もこの説を載録している(浄全二・二一九下)。しかし、現存する道安の註釈書にはこの三分科は見られず、この道安創始説は疑わしい。また、中国で起こったとされる三分科が、インド撰述で玄奘訳の『仏地経論』(正蔵二六・二九一下)に、教起因縁分、聖教所説分、依教奉行分として見られることは玄奘の翻訳に中国仏教の教理学が影響しているものと考えられる。
【参考】青木孝彰「六朝における経疏文科法についての一考察」(印仏研究二一—二、一九七三)
【参照項目】➡科文
【執筆者:市川定敬】