捨閉閣拋
提供: 新纂浄土宗大辞典
しゃへいかくほう/捨閉閣拋
日蓮が『立正安国論』において『選択集』を批判する際に用いた語。『選択集』では、極楽浄土へ往生することを欣う末世の凡夫に対して専修念仏を説くのに、第二章に「雑行を捨てる」(聖典三・一〇四/昭法全三一三)、第一二章に「定散門を閉じる」(同三・一七五/同三四三)、第一六章に「聖道門を閣き…諸々の雑行を拋つ」(同三・一八五/同三四七)とする。これに対して日蓮は『立正安国論』において捨閉閣拋の四字を挙げて「(釈迦)一代の教えを破し、十方の衆生を迷わすものであり、また災難の起因である」(『昭和定本日蓮聖人遺文』一・二一六~二〇/正蔵八四・二〇四下~六中)と批判する。日蓮がこの四字を象徴的に用いて『選択集』批判を展開するのに対して、真迢『破邪顕正記』においては「選択集の捨閉閣拋の言は、観経の文に一向専念無量寿仏といえる、一向の語と同じ」(仏全九七・二三六下)として、極楽への往生行を成就するための語であると反論する。
【資料】聖典三、昭法全、『真迢上人法語』([1]
【参考】望月信亨「専修念仏に対する当時諸家の論難攻撃」(同『仏教史の諸研究』望月仏教研究所、一九三七)、服部正穏「宗教における言語表現の意味理解に関して—特に法然の〈捨閉閣拋〉の文をめぐって—」(『東海仏教』一八、一九七三)
【参照項目】➡立正安国論
【執筆者:米澤実江子】