師資相承
提供: 新纂浄土宗大辞典
ししそうじょう/師資相承
師は師匠、資は籍助(たすけをかりる)者、つまり弟子のことであり、師匠が弟子に法門や教義を相次いで伝えること。その相承の方法は、師から直接、面授口訣される場合や、経論あるいは釈書の義を継承する場合など様々である。また、相承の次第が、そのまま宗派の伝統となり、その宗義の信憑性をも高める意味合いを持つ。これらは各宗派ごとに存在しているが、浄土宗の相承については、『逆修説法』に「浄土宗に既に師資相承の血脈の次第あり。いわゆる菩提流支三蔵・恵寵法師・道場法師・曇鸞法師・法上法師・道綽禅師・善導禅師・懐感禅師・少康法師等なり」(昭法全二三六)として九人の相承を挙げるが、これは「いまだ曽て八宗の外に浄土宗のあることを聞かず」という非難に対して説かれたものであり、この師資相承が、浄土宗開宗の根拠の一つとなっている。さらに『選択集』一においては、浄土の相承に廬山慧遠、慈愍、道綽・善導等の諸説があり一様でないことを明かし、「今且く道綽・善導の一家に依って、師資相承の血脈を論ぜば、これにまた両説あり。一には菩提流支三蔵・慧寵法師・道場法師・曇鸞法師・大海禅師・法上法師なり。〔已上『安楽集』に出づ〕二には菩提流支三蔵・曇鸞法師・道綽禅師・善導法師・懐感法師・少康法師なり。〔已上唐宋両伝に出づ〕」(聖典三・一〇四/昭法全三一三)として『安楽集』所説の六大徳相承と、唐・宋の両高僧伝中に記された浄土の祖師を選び出した説との二説を挙げる。なお、後説の曇鸞から少康の五人は「浄土五祖」として知られ、法然も『類聚浄土五祖伝』を記している。しかし、これらの相承が法然へ直接続くものではなく、あくまでも法然の師は善導であり、夢中対面によって相承したとする。このことは古本『阿弥陀経釈』に「爰に善導和尚の往生浄土宗において、経論ありと雖も、習学する人なし。疏釈ありと雖も讃仰するに倫らなし。然れば則ち相承血脈の法有ること無し。面授口決の儀に非ず」(昭法全一四五)とあることからもうかがえる。つまり、『選択集』等に示される浄土宗の師資相承は浄土宗を宗派と認めない他宗からの非難に対して説かれたものであり、法然以後、二祖聖光、三祖良忠へと続く伝統系譜の如きものではない。
【執筆者:兼岩和広】