浄仏国土成就衆生
提供: 新纂浄土宗大辞典
じょうぶっこくどじょうじゅしゅじょう/浄仏国土成就衆生
諸の衆生を教化し、仏の国土を清浄にすること。仏になることを目指す菩薩が修することがらとされており、成仏のためには欠かせない化他行の一つ。『大智度論』三七によると、「〈能く仏の世界を浄め、衆生を成就す〉とは、菩薩は是の空相応の中に住して、復た礙する所なく、衆生を教化して、十善道及び諸の善法を行ぜしむ。衆生の善法を行ずる因縁を以ての故に仏土清浄なり」(正蔵二五・三三五上)と説示し、仏の国土に住む衆生を教化することでその国土が清浄になっていくという因縁があるという。この思想を浄土教思想に応用したのは聖光で、『徹選択集』下に「真位の菩薩も必ず仏に値遇することは、これ一仏国より一仏国に至り仏国土を浄め衆生を成就せんが為なり」(聖典三・二九二/浄全七・九八上)といって、菩薩位に入ったばかりの菩薩はおろか、仏になる直前の菩薩でさえ仏と離れずにいるのは、仏と値遇することが衆生を教化して仏国土を浄めるための条件であり、念仏行を修し続けることは、浄仏国土成就衆生を志す菩薩と同格の因縁であることを主張している。また、「今〈浄仏国土〉を問答することは、所詮、称名念仏の甚深の義を顕さんが為なり」(聖典三・三〇四/浄全七・一〇三上)、「今、この造書の意趣、浄仏国土成就衆生の義を問答することは念仏三昧の至極甚深の義を顕さんが為なり」(聖典三・三〇一/浄全七・一〇二上)と説き、『徹選択集』執筆の主目的がこの義を論じ、称名念仏行の相続が位の高い菩薩の修する行と同格の行であることを主張することにあるとしている。また、近代に及んでこの思想を基調とする浄土宗教師が社会活動を行ったことが知られている。
【参考】藤本淨彦「聖光上人における不離仏値遇仏の思想—宗教的実存の視点から—」(『源智・弁長・良忠 三上人研究』三上人御遠忌記念出版会、一九八七)、髙橋弘次「徹選択集の思想」(『続法然浄土教の諸問題』山喜房仏書林、二〇〇五)、浄土宗総合研究所仏教福祉研究会編『浄土宗の教えと福祉実践』(ノンブル社、二〇一二)
【参照項目】➡不離仏・値遇仏
【執筆者:郡嶋昭示】