五蘊
提供: 新纂浄土宗大辞典
2018年3月30日 (金) 06:23時点における192.168.11.48 (トーク)による版
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ごうん/五蘊
衆生の個人存在を構成する五つの要素。Ⓢpañca-skandhaⓅpañca-kkhandha。一切法の分類である三科(五蘊・十二処・十八界)の中の第一。色蘊・受蘊・想蘊・行蘊・識蘊をいう。蘊(skandha)は集まりを意味し、旧訳では五陰、五衆、五聚とも訳される。色・識・受・想・行の順に説かれる場合もある。①色(Ⓢrūpa)は物質、とくに衆生の身体のこと。②受(Ⓢvedanā)は感受作用。苦(不快)・楽(快)・不苦不楽などの基本的な感覚。③想(Ⓢsaṃjñā)は表象作用。受蘊によって感受したものを色、形などにおいて心で表象し、概念化するもの。④行(Ⓢsaṃskāra)は意志作用。潜在的形成力、心的作用といわれ、のちにしかるべき結果をもたらすもの。⑤識(Ⓢvijñāna)は認識作用。受蘊によって識別された対象を言語をともなって区別し認識すること。色蘊は身体、受蘊以下の四つは心(精神)に関するもので合わせて身心という。この五蘊に執着し諸々の苦が生じること、とくに有漏の場合を五取蘊(五受蘊)という。取(受)は煩悩の異名。また衆生の身心は五蘊が因縁によって仮に和合して成り立っているものであることから五蘊仮和合という。衆生は五蘊が仮和合して成立しているから、本体というものはなく、無我であるから五蘊皆空という。
【参考】中村元『原始仏教の思想Ⅰ』(『中村元選集〔決定版〕一五 原始仏教Ⅴ』春秋社、一九九三)
【執筆者:北條竜士】