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毛坊主

提供: 新纂浄土宗大辞典

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けぼうず/毛坊主

普段は妻子とともに生活し、農林業などを営んでいるが、俗人のままで僧侶の役をする者。近世には、山深く、近くに寺僧がいない所では、そうした家筋があった。俗家の一間を道場とよび、大津絵の十三仏弥陀の画像、名号などをかけ、袈裟を着て経を読み念仏を称えて、死者を葬した。髪を伸ばした俗人が導師となって弔うのでこのように称したが、正規の僧ではない。『本朝俗諺志』四や『笈埃きゅうあい随筆』などに飛驒にみられたことが出ている。近江や安芸あきにもそのような道場があって一向宗の手次坊主となっていた。この毛坊主の前身は古代から存在した在俗性の強いひじりであった。『日本霊異記』や『三州俗聖起請十二箇条事』などに出てくる、得度をしない半僧半俗の民間宗教者がそれである。有髪に袈裟を着た法師が俗間に遊行するものもあり(『徳本行者伝』中)、彼らをも毛坊主といえないことはない。


【参考】柳田国男「毛坊主考」(『定本 柳田国男集』九、筑摩書房、一九七七)


【執筆者:伊藤唯眞】