弘願義
提供: 新纂浄土宗大辞典
ぐがんぎ/弘願義
法然の門弟である西山派祖証空の教義をいう。西山義または居住していた地名から小坂義ともいう。証空の教学は行門・観門・弘願の三門論によって組織づけられており、この成立根拠が弘願にあるため、弘願義と呼ばれる。弘願とは一切の凡夫を弘く救済する阿弥陀仏の本願のこと。ただしこの弘願は阿弥陀仏が法蔵菩薩であったときの因位の誓願ではなく、果上の誓願を指す。これは衆生往生の論理的根拠を阿弥陀仏の仏体そのものにみる仏体即行説による。証空は阿弥陀仏の本願の中、第十八願文の「若不生者不取正覚」は衆生の往生と阿弥陀仏の正覚の一体成就を誓ったものと解釈し、衆生が往生する正因は阿弥陀仏の仏体に根源的に成就していると説く。このように衆生の往生と阿弥陀仏の正覚が一体となっている仏体を根拠として全分他力を強調する教えをいう。
【資料】証空『観門要義鈔』(西全三、四)
【参考】杉紫朗『西鎮教義概論』(龍谷大学出版部、一九二四)、石田充之『日本浄土教の研究』(百華苑、一九五二)
【参照項目】➡弘願一、行門・観門・弘願門、西山流、法然門下の異流
【執筆者:沼倉雄人】