観門要義鈔
提供: 新纂浄土宗大辞典
かんもんようぎしょう/観門要義鈔
四三巻。『観経疏自筆鈔』『自筆(御)鈔』『薄墨鈔』ともいう。証空が建保三年(一二一五)—嘉禄二年(一二二六)に講述したものを、江戸時代に空覚が出版する際に名づけた。善導の五部九巻のうち『法事讃』以外に対する講述で、初期の著書。証空は師の法然が入滅した後に西山往生院に入り、直ちに善導の疏を講述した。講述は逐語釈で行われ、その日時・場所等の書き込みがみられる。これによると近畿一円にわたって移動していることが知られる。当時、勃発していた法難の社会情勢をうけて、証空が念仏聖の集う場所を訪問しながら、浄土教の正義を宣布したと考えられる。本書は法然の偏依善導一師の立場を継承し善導の浄土教の真意を尋ねている。特に行門・観門・弘願の名目(術語)を駆使している。これにより『観経』の定散二善は諸経に説かれる如説修行の行門ではなく、諸経に異なり弘願を能詮する観門であることを明らかにしている。この観門により弘願を領納するところに凡夫の救済が成就することを明示している。
【所収】西叢一・二
【参考】上田良準『浄土仏教の思想』一一(講談社、一九九二)
【参照項目】➡行門・観門・弘願門
【執筆者:中西随功】