戒体
提供: 新纂浄土宗大辞典
かいたい/戒体
防非止悪の持戒行為を引きおこす根本的原動力となるもので受戒によって犯すことのないように自己を抑制させるものである。戒体については小乗では戒を犯せば戒体は消滅するものとし、大乗では一得永不失とあるようにひとたび得た戒体は永く失われることはないとする。戒体がいかなるものであるかについては色法戒体説、心法戒体説、非色非心(不相応法)戒体説など種々の説があるが、最高の大乗戒とされる円頓戒では智顗の『梵網菩薩戒経義疏』によって「起さずんば已みなん。起こさばすなわち性なる無作の仮色」(浄全一五・八二一下/正蔵四〇・五六五下)といわれるように、性無作仮色を戒体とする。性とは本来具有の義、無作とは表に顕われない潜在行為、仮色とは種々の因縁によって作り出された身体のことであり、人間が本来所有する自在のはたらきをする色心不二の仮の身体をいう。この戒体を一白三羯磨という三回くり返す授戒作法によって発動させる。安然は伝授戒、性徳戒、発得戒の戒があるとし、授戒によって持戒行為の戒体が発動すると説明する。
【執筆者:福𠩤隆善】