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海外における日本浄土教の研究

提供: 新纂浄土宗大辞典

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かいがいにおけるにほんじょうどきょうのけんきゅう/海外における日本浄土教の研究

日本浄土教宗教研究の対象として注目されはじめるのは、一八九三年にシカゴで開催された万国宗教大会を通してなされた比較宗教研究の提案を契機としている。姉崎正治(一八七三—一九四九)は浄土宗高等学院(現・大正大学)での講義録を『比較宗教学』として出版し、一九三〇年には『History of Japanese Buddhism』を発表している。以後、日本の浄土教資料の紹介や研究者の発信を通して海外における浄土教研究が進展した。二〇〇九年一月に至るまでの欧州諸語による浄土教関係の学位論文は八〇点を数えるが、一九二二年にコロンビア大学修士論文にKuroda Toryu:The Influence of “Namuamida Butsu” in Japanそして一九二三年にシカゴ大学修士論文でDay, Clarence Burton:The Cult of Amitabhaが見られる。以後の傾向としては真宗親鸞関係が多数である。法然浄土教関係に限定すれば、一九一〇年にドイツでHaas,Hans: Amida Buddha Unsere Zuflucht, Urkunden zum Verständnis des japanischen Sukhāvatī-Buddhismusが出版され、「一枚起請文」「一紙小消息」が独訳されている。一九二五年には知恩院でCoates, Harper Havelock & Ishizuka Ryugaku: Honen,The Buddhist Saint, His Life and Teachingの出版で『四十八巻伝』が英訳され、絵伝所収の法語類も英訳紹介された。この両書が欧米語圏における法然浄土教研究に果たした成果は多大である。一九五五年にはフランスでLubac, Henri de: Amidaが出版され、一九八五年頃からはアメリカでAndrews, Allan Aによる一連の法然研究が注目された。特に八〇年代からは欧米の浄土教研究者と宗門研究者の交流が活発になり、法然遺文の英・独訳が進められ、それに応じて海外における研究者が徐々に増してきた。その成果として『選択集』の英語訳と仏語訳とが挙げられる。すなわち、Augustine, Morris J & Kondo Tesshoによって一九九七年にアメリカ・バークリーでBDK English Tripiṭaka 104-2として出版、また、Senchakushū English Translation Projectによって一九九八年にハワイ大学出版より出版、さらに、二〇〇五年にフランス・パリでDucor, JérômeによってLibrairie Arthème Fayardより出版のものがある。

日本仏教の資料を古典や原文で読むことができる研究者が外国の大学や研究機関で積極的に養成されて、海外における浄土教研究の層が拡大した。例えば、一九九五年から二〇〇九年三月までの間に欧米語によって発表された日本浄土教関係の論文・著書は約二七〇点である。その多くは、真宗または親鸞に関するものである。そのような研究動向の中で、日本に住居し浄土宗宗門活動を体験した二人のドイツ人研究者の注目すべき成果がある。日本学・宗教学の方法論を用いた、Kleine,Christoph:Hōnens Buddhismus des Reinen Landes;Reform, Reformation oder Häresie?, Bern, Peter Lang,1996と、プロテスタント神学・宗教哲学の方法論を用いたRepp, Martin:Honens religiöses Denken, Eine Untersuchung zu Strukturen religiöser Erneuerung, Wiesbaden, Harrassowitz Verlag,2005とであり、共に大著でドイツの大学教授資格論文の出版である。

国際的レベルにおける研究情報は、Jodo-Shinshu(浄土真宗)pitakaやJérôme DucorのPure Land Buddhism WWW Virtual Libraryによって高い信頼性のもとで獲得することができる。


【参考】浄土宗奨学会助成研究報告書(代表藤本淨彦)『欧米語の法然浄土教研究—その翻訳紹介をめぐる諸課題—』(一九九二)


【執筆者:藤本淨彦】