蓮宗禦寇編
提供: 新纂浄土宗大辞典
れんしゅうぎょこうへん/蓮宗禦寇編
二巻。義海撰。享保一六年(一七三一)刊。華厳学を復興した鳳潭󠄂僧𤀹の浄土門に対する論難の書に対し、義海が浄土宗の立場から反駁を試みた書。題名の「寇」は「害を加える、そこなう」、「禦」は「ふせぐ、ささえ守る」の意。序において、「華厳之学者」からの宗に対する、また、祖師の章疏に対する論難に対しての断固たる反駁の書であることを謳っている。天台の霊空光謙が巻き起こした即心念仏に関する仏教界の論争の一端として、僧𤀹が著した『念仏往生明導箚』は仏教各派に波紋を呼んでいた。本書はそれに対して、上巻では『往生論』『往生論註』に対する誤解を解くことに注力し、四十八願が権説であるという僧𤀹の見解を否定しており、さらに下巻では『観経疏』に関して僧𤀹が評破している問題点を丹念に反駁し、一貫して念仏が別時意でないことを強調している。
【所収】続浄一四、仏全九八
【執筆者:渋谷康悦】