維摩詰所説経
提供: 新纂浄土宗大辞典
ゆいまきつしょせつきょう/維摩詰所説経
初期大乗仏教の代表的経典の一つ。ⓈVimalakīrti-nirdeśa。漢訳には姚秦の鳩摩羅什訳『維摩詰所説経』三巻の他、呉の支謙訳『維摩詰経』二巻、唐の玄奘訳『説無垢称経』六巻がある。「其の心の浄きに随いて、則ち仏土浄し」(正蔵一四・五三八下)と説く仏国品第一に続いて、在俗の居士である維摩詰によって、舎利弗等の十大弟子(弟子品)や弥勒菩薩等(菩薩品)がやりこめられることや、文殊菩薩との往復問答(問疾品~入不二法門品)などを通じて大乗の思想が明かされるという戯曲的な構成を持つ。中国では盛んに講経が行われ、僧肇『注維摩詰経』をはじめ数多くの注釈が作られた。日本でも、聖徳太子が『維摩経義疏』を著し(仮託説あり)、奈良の興福寺では、藤原不比等による創建以来、『維摩経』を講讃する「維摩会」が修された。なお、『維摩経』のサンスクリット原本は、平成一一年(一九九九)、大正大学綜合仏教研究所の調査団によってチベットのポタラ宮より発見された。
【所収】正蔵一四(漢訳)、大正大学綜合仏教研究所梵語仏典研究会編『梵蔵漢対照〈維摩経〉』(大正大学出版会、二〇〇四)
【参考】境野黄洋『維摩経講義』(東方書院、一九三二)、橋本芳契『維摩経の思想的研究』(法蔵館、一九六六)
【執筆者:木村周誠】