不空羂索観音
提供: 新纂浄土宗大辞典
2018年3月30日 (金) 06:32時点における192.168.11.48 (トーク)による版
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ふくうけんじゃくかんのん/不空羂索観音
羂索を持った観音菩薩のこと。観音菩薩がさまざまに変化した姿の一つであり、六観音、または七観音の一つ。Ⓢamoghapāśaの訳。「不空」はⓈamoghaの訳語で、心からの願いがむだにならないということ。「羂索」は、「けんさく」とも読み、鳥や魚を捕らえる網や罠のことで、網を使ってもらさず一切の衆生をすくいとるとの意。大悲心によって一切を残さず済度して失敗することがない観音菩薩という意味。八世紀頃に唐の菩提流志訳『不空羂索神変真言経』(正蔵二〇・二二七上)などの漢訳経典によって広く信仰されるようになった。隋の闍那崛多が訳した『不空羂索呪経』には、この不空羂索観音の心呪を受持することで、現世に二〇種の功徳と、臨終に八種の利益が得られると説かれる(正蔵二〇・三九九下~四〇〇上)。像容は、一面あるいは三面で、四臂、六臂、八臂のものがあるが、多くのものは、一面三目八臂に表され、手には羂索のほかに蓮華・錫杖・念珠などを持っている。身体に鹿の皮をまとうので、鹿皮観音ともいわれる。日本では八、九世紀頃に造像が行われ、東大寺法華堂(三月堂)本尊(国宝)の三目八臂像が有名である。
【執筆者:吉澤秀知】