仏や菩薩が大慈悲心をもって一切衆生を救うこと。利物とは利益衆生のこと。『観経』に「仏心とは、大慈悲これなり。無縁の慈をもって、諸もろの衆生を摂したまう」(聖典一・三〇一/浄全一・四四)と説かれ、仏心のありようが述べられている。『華厳経』十定品には菩薩が「常に大悲に安住して、常に衆生を利益する」(正蔵一〇・二二七中)ことが説かれる。聖聡は『当麻曼陀羅疏』二二において、『観経』観音観に説示される観音菩薩の身光中に現れる衆生が大悲利物の相であり、実際の衆生ではないと説いている。
【参照項目】➡利物
【執筆者:粂原恒久】