墨染の衣
提供: 新纂浄土宗大辞典
すみぞめのころも/墨染の衣
墨汁で染めたような色の衣。墨染、墨衣、墨染衣ともいう。黒、薄墨、ねずみ色の衣。法然はじめ隠遁僧が墨染の衣を用いた。古来出家の別称としても用いられる。『養老律令』の「衣服令」の服色条には、橡墨が最下の色としている。「僧尼令」の聴着木欄条には、皂(墨)と壊色は如法色とし、僧侶が着用するのにふさわしいものとしている。無位無官の僧は通常墨染の衣で、高位のものも平常用として墨染を着用した。『四十八巻伝』七には、「その様、腰より下は金色にして、腰より上は墨染なり」(聖典六・七八)とあり、善導は墨染の禅衣(直綴)を被着している。『四十八巻伝』には法然が墨染を被着していることを記していないが、絵図には墨染の教衣(素絹)と五条袈裟を描いている。
【参考】井筒雅風『法衣史』(雄山閣、一九七四)
【参照項目】➡壊色
【執筆者:西城宗隆】