懺法
提供: 新纂浄土宗大辞典
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せんぼう/懺法
犯した罪を告白し、許しを乞う懺悔の行法。また法華懺法の略。比丘が布薩安居で行っていた自恣は、中国において儀式法則が定められ、六根懺悔や身口意三業懺悔などが仏前において行われるようになり、懺法は礼拝懺悔を行う礼懺儀や懺悔発願する懺願法となった。懺法を修行法として位置づけた智顗によって『法華三昧懺儀』や『方等懺法』が著され、次第に諸経典による懺法が出現する。智顗の『法華三昧懺儀』には六根による罪障の一々の懺悔や懺悔・勧請・随喜・回向・発願の五法による五悔の懺悔法が説かれる。五悔は礼懺法である善導の『往生礼讃』にもみられる。これはやがて宋代の知礼や遵式の天台学徒に継承され、遵式には『往生浄土懺願儀』があるが、これは智顗の『法華三昧懺儀』の形式を受け継ぎながらも、善導の影響を受けたと考えられる。ここにはいわば法華信仰と弥陀信仰との融合がみられ、矛盾しない立場の懺法として注目される。日本では悔過といい、『薬師経』による薬師悔過が有名であり、天平一六年(七四四)一二月に天下諸国をして薬師悔過を七日間修せしめたこと(『続日本紀』一五)が伝えられるなど、奈良・平安期に隆盛した。平安期には法華信仰と弥陀信仰にもとづく懺法として『法華懺法』と『例時作法』の二書が著された。『法華懺法』は智顗の『法華三昧懺儀』にもとづいた形式内容であり、『例時作法』は『弥陀懺法』というべきもので、形式は『法華三昧懺儀』にもとづきながらも内容は弥陀信仰による懺悔法となっている。近年、平安・鎌倉にかけての資料とみられる『西方懺悔法』や『西方懺法』『念仏五悔講式』等が発見され、懺悔法の歴史が明らかになってきた。『四十八巻伝』九は、法然が懺法を修したことを伝えるが、法語類にはみられず、懺悔の用例も少ない。懺悔の用語を多用し懺悔人といわれた善導によりながらも、法然は機の深信の徹底した自己凝視による凡夫の自覚を強調した。
【執筆者:福𠩤隆善】