「五色の糸」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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ごしきのいと/五色の糸
極楽往生を願う者が臨終において横たわりながらも自らの手で引くために、仏像や仏画の尊像の手に付した糸のこと。『今昔物語』二〇—二三に「枕上に阿弥陀仏を安置して、其の御手に五色の糸を付け奉りて、其れを引て、念仏を唱うる事、四五十遍計して、寝入るが如くいて絶入ぬ」とある。五色の糸は臨終行儀と関連するが、源信『横川首楞厳院二十五三昧起請』や良忠『看病用心鈔』などでは「糸」ではなく五色の「幡」を用いるとし、覚鑁『一期大要秘密集』では五色の幡もしくは五色の糸を用いるとする。五色とは青・黄・赤・白・黒と言われ、例えば伝覚鑁『孝養集』にも明記されている。ただし今日的には青は緑、黒は紫を指す。なお『醍醐本』「御臨終日記」では「御手に五色の糸を付け、之を執らしめ給うべきの由勧むれば、此の如きの事是れ大様の事なりと云いて終に取らず」(昭法全八六九)とある。また諸法要において角塔婆(回向柱)を建てる際にも、尊像の御手と回向柱を結ぶために用いられている。
【参考】『日本古典文学大系二五 今昔物語四』(岩波書店、一九六二)、神居文彰他『臨終行儀—日本的ターミナル・ケアの原点』(北辰堂、一九九三)、福西賢兆編『浄土宗の法式三 法要篇Ⅱ』(斎々坊、一九九二)
【執筆者:袖山榮輝】