「済暹」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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さいせん/済暹
万寿二年(一〇二五)—永久三年(一一一五)一一月二六日。平安時代後期の真言宗の僧。仁和寺慈尊院に住した。当時における真言宗の重鎮で『続遍照発揮性霊集補闕鈔』三巻の編纂者。空海の詩文は高弟真済によって『続遍照発揮性霊集』にまとめられたが、八・九・一〇巻が散逸。承暦三年(一〇七九)、済暹が散逸したものを再び編纂して完全なものとした。空海の著作への註釈をはじめ、他宗の教義に関するものまで七〇部にも迫る著作があるとされながらその多くは現存しない。また日本仏教において浄土観が重要視されるなか、『四種法身義』において「法界宮密厳土」「密厳法性土」「密厳浄土」などという語を用いるなどして仏土観に言及。法身である大日如来は真理の領域に住す一方、現象の領域にも顕現し、その双方の領域がともに密厳土であるとした。真言密教における密厳国土論は覚鑁によって一応の完成が見られるとされるが、済暹はその布石となったと評される。
【資料】『四種法身義』(正蔵七七)
【参考】堀内規之『済暹教学の研究—院政期真言密教の諸問題—』(ノンブル社、二〇〇九)
【参照項目】➡密厳浄土
【執筆者:袖山榮輝】