「民間信仰」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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2018年3月30日 (金) 06:34時点における最新版
みんかんしんこう/民間信仰
民間に流布・伝承した多種多様の信仰形態の総称。国などの管理をうけず民衆の間で日常的に行われる宗教的行為。民俗宗教ないし民俗信仰、庶民宗教ないし庶民信仰、固有信仰とほぼ同義に用いられている。文化を表層文化と基層文化とに分けた場合、基層文化に含まれる。前者は「見える文化」であり、後者は「見えない文化」と表現できる。言い換えると、成立宗教と非成立宗教の対置となるが、組織的・既成的・歴史的なものと土俗的・地生的なものとがあることを意味している。成立宗教といった場合、教祖・儀礼・教団の三要素の存在を明確に指摘できるが、民間信仰という場合は、非組織的・非既成的・伝承的・土俗的・地生的な性格を持つ信仰形態を指す。したがって民間信仰は、宗教の基層ともいえるアニミズムであり、それ故に特徴として、アニミズムから展開した死霊・祖先神を有する産霊信仰や、守護霊としての和霊と悪霊としての怨霊や御霊の信仰を持つ。また、仏教の天部の神格などにみられるように外来宗教との接触によって生まれた信仰、いわゆる習合宗教の特徴などを有するとされる。堀一郎は東京大学の講義題目に民間信仰を民俗信仰と言い換えている。堀はアメリカ・シカゴ大学のレッドフィールド(R. Redfield)の提唱した大伝統と小伝統との区分に触発され、小伝統で基層文化である民間信仰を成立宗教と対比した場合、未分化組織としての民間信仰よりも習合宗教としての民間信仰の特徴に注目し、成立宗教的な要素を持つものとして捉えた。以後、民間信仰の語を民俗宗教の語に置き換えることが行われるようになった。このように、宗教学や文化人類学の観点にたった場合と日本の信仰を実態に即して捉える場合とではおのずとアプローチの仕方が異なるといえる。現在は民俗宗教・民間信仰と併記されることもある。
【参考】堀一郎『民間信仰』(岩波書店、一九五一)、柳田国男『民間伝承論』(『定本柳田国男集』二五、筑摩書房、一九六四)、桜井徳太郎『日本民俗宗教論』(春秋社、一九八二)、宮家準『宗教民俗学』(東京大学出版会、一九八九)、楠正弘編『宗教現象の地平』(岩田書院、一九九六)
【執筆者:藤井正雄】