「沙羅双樹」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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2018年3月30日 (金) 06:26時点における最新版
しゃらそうじゅ/沙羅双樹
「さらそうじゅ」とも読む。沙羅はⓈśālaⓅsālaに対応する音写語。「双樹」は意訳語(二本の樹木)であり、合わせて「二本のシャーラ樹」の意味。他の音写語に娑羅、薩羅があり、意訳して堅固樹ともいう。フタバガキ科の常緑樹。淡黄色の小花が咲く。インドの霊樹信仰では樹下は生命の宿る善所とされ、特定の樹下において過去仏は成仏したという。例えば過去七仏中の毘舎浮仏(第三仏)の成道の場所がこのシャーラ樹下である。仏伝においてはクシナガラ郊外の釈尊臨終地に登場する樹木として知られる。釈尊は涅槃の際、二本のシャーラ樹の間に頭を北にし、右脇を地につけ臥せたと伝承される。註釈では頭と足の方角、つまり南北にシャーラ樹があったと補足される。このときにシャーラ樹が満開となり、その花弁が降り注いだという。この奇瑞にちなんで日本では「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり、沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす」(『平家物語』冒頭)、「沙羅双樹の涅槃の夕までのかたを書き現させ給えり」(『栄花物語』一七)などの表現が見られる。
【参考】満久崇麿『仏典の植物』(八坂書房、一九七七)、中村元『ブッダ最後の旅』(岩波書店、一九九一)
【参照項目】➡鶴林
【執筆者:中御門敬教】