「十方随願往生経」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
Seishimaru (トーク | 投稿記録) 細 (1版 をインポートしました) |
|
(相違点なし)
|
2018年3月30日 (金) 06:26時点における最新版
じっぽうずいがんおうじょうきょう/十方随願往生経
一巻。『灌頂経』(具名『仏説灌頂七万二千神王護比丘呪経』)に収められる一二部の経典のうち第一一番目の経典で、具名を『灌頂随願往生十方浄土経』という。『開元録』では東晋の帛尸梨蜜多羅訳とするが、『歴代三宝紀』では「失訳」(訳者不詳)、『法経録』や『彦琮録』では「疑惑」とされており、近代以降の研究では中国撰述経典であることがほぼ通説となっている。内容としては、東方香刹をはじめとする十方十仏の浄土への往生を説き、それらの各浄土は元来質的な差別はなく、その願いにしたがっていずれの浄土にも往生できるという随願往生を説く。したがって西方浄土を特別視する立場ではなく、衆生の心を専注させるためにあえて個別の仏国土を讃歎するのだという。道綽『安楽集』、迦才『浄土論』、『十疑論』など浄土教の諸家に多く引用され、本経に説かれる三七日の逆修法は法然『逆修説法』に強い影響を与えたとされる。
【所収】正蔵二一
【参考】望月信亨『仏教経典成立史論』(法蔵館、一九四六)、柴田泰「浄土教関係疑経典の研究(一)」(『札幌大谷短期大学紀要』八、一九七四)
【執筆者:工藤量導】