「霊祭」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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たままつり/霊祭
精霊祭・盆祭などともいい、七月一三日から一五日ないし一六日までの三日ないし四日間に祖先の霊を迎えて祭る行事。魂祭とも書く。正式には『盂蘭盆経』による盂蘭盆会で、目連尊者が餓鬼道に堕ちた亡母を救う話に由来する。『玄応恩義』一三には烏藍婆拏とあり、倒懸(逆さ吊り)を意味する。盂蘭盆の語源には諸説あり、唐代初期に器物として理解されていたとする説、倒懸を意味するサンスクリット語の俗語形ウランバナであるという仏教者側からの説などがある。また中国に麦作と粉食をもたらしたイラン系のソグド人の間で死者の霊魂を意味するウルヴァンが起源とする説もあり、このソグド人の先祖まつりが、中国の麦作地帯における収穫祭の中元(七月一五日)と結びついたとする。日本では『日本書紀』によると、推古天皇一四年(六〇六)に「この年より初めて寺毎に、四月八日、七月一五日に設斎せしめき」とあるのが初見である。その後国民的行事になり、新暦盆・月遅れ盆・旧盆と計三度時期を異にして、同じ地域でも三つの盆が入り乱れて営まれている。
【参考】柳田国男「先祖の話」(『定本柳田国男集』一〇、筑摩書房、一九六二)、岩本裕『目連伝説と盂蘭盆』(『仏教説話研究』三、法蔵館、一九六八)、坂本要『地獄の世界』(北辰堂、一九九〇)、高谷重夫『盆行事の民俗学的研究』(岩田書店、一九九五)、藤井正雄『盂蘭盆経』(講談社、二〇〇二)
【執筆者:藤井正雄】