「大智度論」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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2018年3月30日 (金) 06:28時点における最新版
だいちどろん/大智度論
一〇〇巻。伝龍樹造・鳩摩羅什訳。具名は『大智度初序品中縁起義釈論』などといい、巻ごとに具名を持つ。『摩訶般若釈論』『智度論』『智論』などともいう。漢訳のみ伝わり、梵本等は伝わっていない。『大品般若経』の注釈書で、原文を引用しながら逐文で解説を施している。しかし原典通りに解説をすると現存する一〇〇巻本よりもさらに大部になるため、羅什が三四巻までを同経初品の全訳にあて、あとは適宜省略しながら訳出したと考えられている。六波羅蜜の思想が中心となっているが、広く仏教の諸思想を網羅し、仏教辞典としての性格も有しているといえる。そのため、後世への影響は大きく、湛然の『止観義例』には、「用る所の義旨、法華を以て宗骨と為し、智論を以て指南と為す」(正蔵四六・四五二下)とあるように、天台宗では『法華経』に次ぐ論書とされているほか、曇鸞の『往生論註』への影響の強さも指摘されており、唐代に至る以前から仏教思想への影響があったことが指摘されている。浄土宗祖師の中では、聖光が証真から『大智度論』の思想を伝授されたことが知られており、また聖光『徹選択集』(聖典三・二九一)には称名念仏の教説を『大智度論』所説の「不離仏・値遇仏」の思想から言及し、また『西宗要』(浄全一〇・一四一下)で称名念仏行を六度万行のうち禅波羅蜜に譬え、これに六度万行が全ておさまるという説示を行っているなど、その影響の強さがうかがえる。
【所収】正蔵二五・国訳釈経論部一—五
【参考】石川琢道『曇鸞浄土教形成論—その思想的背景—』(法蔵館、二〇〇九)、武田浩学『大智度論の研究』(山喜房仏書林、二〇〇五)、髙橋弘次「徹選択集の思想」(『続法然浄土教の諸問題』同、二〇〇五、初出『仏教文化研究』三〇、一九八五)
【参照項目】➡不離仏・値遇仏
【執筆者:郡嶋昭示】