「イニシエーション」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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2018年3月30日 (金) 06:19時点における最新版
イニシエーション/initiation
共同体における構成員の宗教的、社会的地位の移行のために行われる儀礼や儀式。通過儀礼、加入儀礼、加入式などと訳される。共同体内の全構成員を対象とする成人儀礼、小集団・個人を対象として行われる秘儀集団や講への加入儀礼、シャーマン・呪医など特別な宗教的地位獲得のための儀礼などがある。イニシエーションの身近な例として、成人式があげられる。成人式は共同体全構成員を対象としており、子どもから大人への移行を社会的に承認するための儀礼であると共に、参加者に共同体の責任ある構成員になったことを自覚させる働きをもつ。浄土宗における伝宗伝戒道場も、浄土宗教師としての宗教的地位獲得が目指されるので、イニシエーションと呼ぶことができよう。そこでは、前行で、礼拝・称名念仏・礼讃などの五種正行を通して身器を清浄にして罪障消滅を祈請する。別行では宗脈・戒脈を相承し、浄土宗の能化として新たな宗教的地位を得る。このように、イニシエーションは、「死」と「再生」を象徴化し儀式内に取り入れることが多い。ここでの「死」は幼年時代の終焉、無知や俗状態の終止を意味し、「再生」によって共同体に共有されている世界観の伝授、共同体への加入が認められる。これらの儀礼を通じて、共同体の構成員は新たな地位を獲得する一方、新たな身分に対する責任を認識する。同時に、一緒に儀礼を受けた者同士に親密な感情を育ませるという機能もある。
【参考】M・エリアーデ著/堀一郎訳『生と再生—イニシエーションの宗教的意義—』(東京大学出版会、一九七一)
【参照項目】➡伝宗伝戒道場
【執筆者:髙瀬顕功】