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金剛界・胎蔵界

提供: 新纂浄土宗大辞典

こんごうかい・たいぞうかい/金剛界・胎蔵界

諸仏・諸菩薩から森羅万象、全宇宙に至るすべての活動を法身大日如来の顕現と解する密教における仏陀観、もしくは世界観について、二つの観点から表す一対の語。一般的には両界の曼荼羅を想起する。密教においては『大日経』といわゆる『金剛頂経』が「両部の大経」と称され、前者に則して金剛曼荼羅が、後者に則して大悲胎蔵生曼荼羅が呈示され、併せて両部曼荼羅と称される。胎蔵界曼荼羅、あるいは両界曼荼羅という呼称は台密の影響によるという。空海と関連深いとされる『秘蔵記』は「胎蔵とは理なり。金剛とは智なり」(正蔵図像一・二中)と両部の特性を指摘。さらに大日如来には理法身と智法身の二面性があるとして、その理と智について「理智相離れず。理より智用起こり、智より大悲起こる」(同・四下)と述べる。すなわち大日如来の理法身としての側面が胎蔵として、智法身の側面が金剛界として表されるのである。金剛曼荼羅は、われわれが法身と同一の覚りの智慧を具え持っていて、その智慧が限りなくさまざまなかたちをとって個別に現象しているさまを表しているとされ、また胎蔵曼荼羅については、胎蔵の基本的な原理とその活動が覚りの智の実動である悲の働きとして展開するさまを表しているとされる。


【参考】頼富本宏『曼荼羅の鑑賞基礎知識』(至文堂、一九九一)、宮坂宥勝『空海密教の宇宙』(大法輪閣、二〇〇八)


【執筆者:袖山榮輝】