贈円光大師号絵詞
提供: 新纂浄土宗大辞典
ぞうえんこうだいしごうえことば/贈円光大師号絵詞
三巻。『贈号絵巻』とも称す。紙本著色の萌黄金襴表具仕立て。知恩院蔵。元禄一〇年(一六九七)一月一八日に、東山天皇から法然に円光大師の諡号が勅賜されたときの知恩院での慶讃法要の様子について、湛澄が撰文し、それを雲竹が詞書として浄写し、古礀が情景を絵に描いた絵詞伝。勅使伏原宣通が先求院から女人坂を登って御影堂に向かうと、堂前で山主白誉秀道と金戒光明寺薫誉寂仙が迎え、勅使は御影前に進んで諡号を宣揚する。内陣には一山重役や門末寺院が整列し、外陣には結縁の信徒があふれ、法会を見ようと廊下に上がれない大衆が境内に充満している様子などが描かれている。本絵詞伝は円光大師号宣下の法要記録としてのみならず、元禄当時の庶民の風俗を描写していることから、時代考証にも役立つ価値ある史料である。版本が宝永八年(一七一一)に一冊本として刊行されるが、絵の多くは略されている。
【参考】井川定慶「仏教美術」(『浄土宗新聞』一九七〇年七月)、藪内彦瑞編『知恩院史』(知恩院、一九三七)、『知恩院』(古寺巡礼 京都一六、淡交社、二〇〇七)
【執筆者:山本博子】