磨崖仏
提供: 新纂浄土宗大辞典
まがいぶつ/磨崖仏
石仏の一種で自然の崖や巨石に彫り出されたもの。インド・中央アジア・中国等の巨大石仏の多くはこれに含まれる。線刻されたものと浮き彫りの、大別して二種が存在する。表現は専門的な工人の手になる整った作風のものから、素朴な味わいのあるものまで多様である。日本では古くは滋賀・狛坂寺の作例が、朝鮮半島の彫刻作例に通ずる作風を示すことで著名である。京都・笠置寺の弥勒如来線刻像も著名であったが南北朝の戦火によって損傷を受けた。平安時代に入ると作例が増加し、大分・熊野磨崖仏のような、岩石に上半身のみ出現したかのように表すものや、富山・日石寺の不動明王坐像(国重要文化財)のように、丸彫の彫刻を浮き彫りに置き換えたと言える作例も見られる。大分・臼杵の石仏群は各部材を組み合わせる構造など、木彫に倣ったその優れた造形性から国宝に指定されている。分布の北限とされて著名なものは岩手・平泉の達谷窟毘沙門堂で、大部分が剝落しているが眼と鼻の大きい巨大な如来面が浮き彫りで残されている。
【参照項目】➡石仏
【執筆者:近藤謙】