灰身滅智
提供: 新纂浄土宗大辞典
けしんめっち/灰身滅智
身体を灰にし、心(智)を滅すること。焚身灰智、略して灰断、灰滅ともいう。すなわち、部派仏教の最終目的とされる、煩悩も肉体も完全に滅し尽くした状態である無余涅槃を指す。『金剛仙論』九に「小乗の人は三界の煩悩を断じ、分段生死を尽くし、灰身滅智して無余涅槃に入り、善悪因果一切俱に捨す」(正蔵二五・八六四下)と説明される。このような部派仏教の考え方は、無住処涅槃(生死にも涅槃にも住しない状態)や久遠実成の仏陀を主張した大乗仏教側から、自分自身だけが修行を完成する利己的な態度であると批判された。ただし、この語は阿含経典や部派仏教の諸論書には現れず、大乗仏教の諸論疏にしか見られないことから、その典拠も明らかでなく、部派仏教の姿勢を批判する大乗仏教側が造語した可能性もある。
【参照項目】➡無余涅槃・有余涅槃
【執筆者:榎本正明】