沐浴
提供: 新纂浄土宗大辞典
もくよく/沐浴
水や湯などにより身体を浄める払除儀礼。沐澡、澡浴ともいう。聖なるものに接する前に一般的には水で身体を洗う、口を漱いで体内を清める、頭に灌水して、神霊を動かすとされる神聖な唱え言を言うなどする。インドのヒンドゥー教では水辺には神々が集まるとされ、沐浴は祭祀儀礼を構成する重要な要素であり、なかでもガンジス川は尊ばれ、大河で沐浴することにより罪や汚れが消え失せるという。日本では葬式のあと戸口で塩を撒く風習があり、「きよめ塩」といって葬場で配られるが、もとは海水で身体を洗い清めた名残とされている。禊の起源は「記紀」によると、イザナギが亡くなった妻のイザナミを黄泉国に訪ねるが、そこで身についた穢汚を川で「みそぎはらへ」したことである。禊は時代を経るに従い水行・滝行といった修行法になっていく。願い事をする前に千垢離・万垢離の習俗も行われた。
【参考】加藤玄智『神道の宗教発達史的研究』(中文館、一九三五)、柳田国男『日本の祭』(弘文堂、一九四二/『定本 柳田国男集』一〇、筑摩書房、一九六二)、竹中信常『宗教儀礼の研究』(青山書院、一九六〇)
【参照項目】➡お祓い
【執筆者:藤井正雄】