摺仏
提供: 新纂浄土宗大辞典
しゅうぶつ/摺仏
同一の仏・菩薩を数多く図示する必要から、特定の仏・菩薩を版木に彫り、その上に紙をおいて摺り出したものをいう。「すりぼとけ」とも呼ばれる。また同種のものに印仏がある。これは印章のように上から捺印したものをいう。摺仏・印仏の歴史は古く『正倉院文書』の「経巻納櫃帳」に出てくるが、その中心は平安時代以降である。この摺仏・印仏の製作が、彫刻によって仏をつくるより経済的に容易で、多数の造仏が可能であることにより、個人の作善業・供養業として盛んに行われた。鎌倉・室町時代には寺院修営などの勧進札として、また結縁者に授与される守り札として用いられた。特に鬼形の「角大師」として知られる良源の摺仏は魔除けの護符としてつくられ、現世安穏・無病息災の摺仏として庶民の生活の中に広く受けいれられた。
【参考】徳力富吉郎『日本の版画』(河原書店、一九六八)、成田俊治「摺仏・印仏攷」(『鷹陵史学』三・四合併号、一九七七)
【参照項目】➡良源
【執筆者:成田俊治】