摂論宗
提供: 新纂浄土宗大辞典
しょうろんしゅう/摂論宗
真諦三蔵が翻訳した無著撰『摂大乗論』およびその世親釈を中心に研究したグループのこと。近年は摂論学派と呼称されることが多い。道綽と善導は「通論之家」と呼び、日本の浄土教者は通論家、摂論家などと通称する。真諦訳『摂大乗論』は江南の地では教理研究があまり進まなかったが、北周の武帝による破仏を契機として、地論学派の学僧たちによって北地へもたらされた。曇遷の講義によって一気に広まりをみせ、『涅槃経』の研究とならび、唐初の長安でもっとも隆盛をほこった(正蔵五〇・五四九中)。従来は、湛然『法華玄義釈籖』の伝承(正蔵三三・九四二下)をもとにして、地論宗の南北二派のうち、北道派から摂論学派へ展開したとされてきたが、現在は南道派から摂論宗へ転向した人物が多数であったことが明らかになっている。摂論宗の特徴的な教説として、阿摩羅識を含む九識説、三性説、熏習説、四土説などがあり、また往生別時意説をとなえて、浄土教の念仏による即得往生を批判したとされる。
【参考】鎌田茂雄『中国仏教史』四(東京大学出版会、一九九〇)、柴田泰山『善導教学の研究』(山喜房仏書林、二〇〇六)、吉村誠「中国唯識思想史の展開」(シリーズ大乗仏教七『唯識と瑜伽行』春秋社、二〇一二)
【執筆者:工藤量導】