愚禿鈔
提供: 新纂浄土宗大辞典
ぐとくしょう/愚禿鈔
上下二巻。『二巻鈔』ともいう。親鸞著。真蹟本は現存せず、顕智と存覚の二種の書写本が残る。二本は多少本文や訓読を異にしており、『定本親鸞聖人全集』では別々に収録されている。「建長七歳乙卯八月二十七日書之 愚禿親鸞八十三歳」の奥書から建長七年(一二五五)の撰述とするのが一般的であるが、存覚本の上下巻共に同奥書があることから、この年月日は清書年次であり撰述年次はこれに先立つとする見解もあり、確定的なものはない。真宗教義の教相と安心をあらわす要文を図式的にあらわしたもの。上巻では、一代仏教を横超、横出、竪超、竪出の二双四重の教判をもとに位置づけ、他力横超道に依ることをあらわし、「浄土三部経」の内容を吟味し、下巻では善導の三心釈について、自利真実と利他真実との説示を詳細に分別し、信心の真仮を明らかにする。最後に『観経』の定散自力の往生説は『無量寿経』の本願他力に帰入させるためのものであったと結論する。
【所収】真宗聖典、『定本親鸞聖人全集』二(法蔵館、一九六九)
【参考】灘本愛慈『愚禿鈔要義』(永田文昌堂、一九七二)、藤原幸章『愚禿鈔講叢』(東本願寺出版部、一九七八)
【参照項目】➡二双四重
【執筆者:藤田真隆】