安心門・起行門
提供: 新纂浄土宗大辞典
あんじんもん・きぎょうもん/安心門・起行門
称名念仏行よりも信心に重きをおく一念義等の流派が提唱した阿弥陀仏信仰の二種の形態。信心を重視する安心門によってこそ往生は得られるとして、往生行としての念仏行はさほど必要ないとする説。起行門とは、そうした安心門からの見方で、念仏という行によって往生を遂げると理解する立場。安心門より低位と位置づける。聖光『授手印』には、「ある人の云く、善導は安心門の義、起行門の義を立つ。この二門を建立して安心門の日は学文して、念仏を修せしめずといえども、安心門によって往生を得。その起行門の人は、念仏を修せしむといえども、義を知らざるに依って、往生を得ず」(聖典五・二四六)とあって、念仏行を修さずに往生を得ることができる説としてこの説を取り上げて批判している。また、『念仏名義集』にも「或人は一念義を立てて安心門起行門とて二門を立て、安心門の往生こそ目出たけれ。安心門こそ知らずして知らんと思わば我が流に入て我が流の学問をせよ。安心門を知らずして申さんずる念仏は往生すまじ、徒ら事なりとて、念仏申す者を留む」(浄全一〇・三八二上)とあって、一念義の説として指摘している。
【資料】『授手印』、『念仏名義集』
【参考】坪井俊映「法然門下における聖光上人の地位—本願念仏思想に関して—」(『仏教文化研究』三〇、一九八五)
【参照項目】➡安心派・起行派
【執筆者:郡嶋昭示】