善導教学の研究
提供: 新纂浄土宗大辞典
ぜんどうきょうがくのけんきゅう/善導教学の研究
一
大原性実著。初版は昭和一八年(一九四三)一一月、明治書院刊。本書は刊行当時の善導研究の最高峰をなす内容であり、その学説は今なお傾聴すべきものがある。序論では善導の伝記と著作について概観し、本論では善導教学の玄談、信心観、観法観、念仏観、作業観、人間観、浄土観、善導教学の日本的展開、さらに附論(二稿)という目次で構成されている。善導以前の諸師の所説と善導の著作とを丁寧に比較しながら、善導教学の独自性の輪郭を的確に解説している点が特徴である。昭和四九年(一九七四)二月、『真宗教学史研究』六として、永田文昌堂より再刊。
【執筆者:柴田泰山】
二
岸覚勇著。昭和三九年(一九六四)一月、記主禅師鑽仰会刊。著者は望月信亨の門下生でもあり、望月の『中国浄土教理史』の影響を色濃く受けている。本書では善導教学を概観している。また本書の続編として昭和四一年(一九六六)四月に『善導教学の研究続』が、同四二年八月、『続々善導教学の研究』がともに記主禅師鑽仰会より刊行されている。『善導教学の研究続』では『無量寿観経纉述』や道誾『観経疏』と善導との比較を、『続々善導教学の研究』では善導以後の諸師と善導の比較を行っている。これら三冊は当時の中国浄土教研究の最先端であり、著者のような丁寧な研究は今後の中国浄土教研究の大きな指針ともいえよう。
【執筆者:柴田泰山】
三
柴田泰山著。平成一八年(二〇〇六)一二月、山喜房仏書林刊。従来の日本浄土教における思想的な根拠を善導教学に求めるという善導像ではなく、「中国仏教史上における善導」という視点から、同時代の文献資料を縦横に精査したうえで、善導教学の独自性や宗教性を追究している。内容としては第一部・善導『観経疏』の思想背景、第二部・善導『観経疏』の諸問題となっており、巻末では道誾『観経疏』、靖邁『称讃浄土経疏』の復元を試みている。平成二六年に第二巻が出版された。内容としては第一部・善導『観経疏』の時代背景、第二部・善導『観経疏』の世界、第三部・善導教学の諸問題となっており、巻末に『法事讃』の現代語訳が収録されている。
【執筆者:工藤量導】