即心念仏浄土問弁
提供: 新纂浄土宗大辞典
そくしんねんぶつじょうどもんべん/即心念仏浄土問弁
一巻。知空撰。享保一四年(一七二九)七月刊。西山派の学僧である知空が、霊空光謙の即心念仏説に対して反駁したもの。本書の序によると、知空は阿波国昌住教寺の住僧であり、眼の医療のために入洛し、道友との即心念仏の談話を機会に著したとある。知空は霊空の即心念仏について、観仏と口称の念仏を混雑にしてしまい、末世の要行である浄土の教門を貶めていると捉え、弘願他力の法門である称名念仏は妙法であることを本書において論証している。問答形式となっており、霊空の『即心念仏安心決定談義本』および『即心念仏安心決定談義本或問』における二六の問題点を挙げて、浄土宗西山派の立場から論じ、経論を引用して一々に論破している。内容について注目すべきは、末世においては理観よりも事の念仏が修しやすく一切の者が往生できること、称名念仏は宗祖法然ではなく阿弥陀仏が選択し釈尊や三世の諸仏が証誠していること、称名念仏を誹謗することは二尊を誹謗していることなどが挙げられる。
【所収】続浄一四
【参考】大塚霊雲「即心念仏批判—西山義からの主張—」(日仏年報六二、一九九七)
【執筆者:後藤史孝】