りこしゅぎ/利己主義
エゴイズムの訳。自己の利益や欲望を追求し、それが他者に及ぼす影響を顧みない行動原理。利他主義に対する。自己保存に基づく自然的傾向であるが、倫理的に普遍的規範原理として提唱すれば、自己矛盾に陥る。ホッブズは利他的にみえる行為も偽装された利己追求だとしたが、カントは、傾向性は利己的だが、理性は自他を超えた普遍的なものであり、両者の相克を決定するものが意志であるとした。一般に普遍宗教の根本は、人間の利己性を罪障として自覚し、神や仏菩薩などの利他的な働きに目覚めることにあろう。浄土教では、前者が機の深信、後者が法の深信に当たる。
【参照項目】➡信機・信法
【執筆者:司馬春英】