五濁
提供: 新纂浄土宗大辞典
ごじょく/五濁
時代が下るにつれて増進する五つのけがれ、みだれ。『阿弥陀経』や『法華経』一には「五濁悪世」とあり、①劫濁②見濁③煩悩濁④衆生濁⑤命濁の五が示されている。①劫濁Ⓢkalpa-kaṣāya。時代のみだれで、戦乱・飢饉・疫病などが多くなること。②見濁Ⓢdṛṣṭi-kaṣāya。思想のみだれで、邪悪な思想がはびこること。③煩悩濁Ⓢkleśa-kaṣāya。貪・瞋・痴の三毒煩悩などが盛んになること。④衆生濁Ⓢsattva-kaṣāya。人びとの資質が低下して教えの理解力が劣化すること。⑤命濁Ⓢāyuṣ-kaṣāya。人びとの寿命が短くなること。浄土宗がよりどころとしている聖道門・浄土門の教判はこの時代認識を基盤にしている。『安楽集』上には『大集月蔵経』の説に基づき「当今は末法、現にこれ五濁悪世なり。ただ浄土の一門のみありて通入すべき路なり」(浄全一・六九三上/正蔵四七・一三下)とあり、釈尊在世から遠く時が隔たり教えの理解力も劣った、現今末法の五濁にみちた悪世の衆生は、浄土門によらなければ解脱をえることはとうていできないとしている。
【執筆者:粂原勇慈】