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三経随聞講録

提供: 新纂浄土宗大辞典

さんぎょうずいもんこうろく/三経随聞講録

一二巻。義山講説、素中記。『無量寿経随聞講録』六巻、『観無量寿経随聞講録』五巻、『阿弥陀経随聞講録』一巻からなる。各『随聞講録』は同じ構成であって、それぞれ、大意・釈名・入文解釈三門からなる。大意は教起所因、所説大猷たいゆう宗体定判、蔵教所摂の四を述べ、釈名では経題および訳者について論じ、入文解釈では経文の逐語的註釈が施される。『阿弥陀経随聞講録』末尾の素中の識語によれば、義山素中からの「浄土三部経」講演の要請を宝永三年(一七〇六)秋に応諾、素中は聴受して講義の内容を記録し、『随聞記』としたという。享保一〇年(一七二五)には観徹の『三部経合讃』が刊行され、素中は「謂うべし、善を尽くし美を尽くせり。実に以て千歳の易解を発するに足れる者なり」と評価する。その後、素中に対して「三部経」講説の要請があり、『三部経合讃』に対校し、「余が管窺かんきまじえて」講義し、「師(義山)の口説を模し」、最終的に『随聞講録』としてまとめたという。同一二年のことである(浄全一四・七五八上)。なお、義山は享保二年(一七一七)に遷化している。これによれば、『三部経合讃』の刊行に刺激されて、素中義山の説をもととして『三部経合讃』と突き合わせつつ、自解をも交えながら講説記録したものが本書である。『随聞講録』では字句の解釈に当たって『三部経合讃』を引用しその後に別に釈を続けるのを常とするが、『三部経合讃』の字句釈で引用されていないところがわずかであるところからも『三部経合讃』との密接な関係がうかがわれる。しかもその際、引用であることを一々断っていない。また、素中自身が言うように、『随聞講録』は義山の講説の忠実な記録ではなく、素中の理解が加えられている点には注意を要する。義山は数多くの浄土宗の宗典を校訂出版しており、その学識に裏打ちされた解説は詳細綿密であり、訓読法や字音の指示にまで至る。ただし、ここに示された訓読法や字音はいわゆる「大雲点本」と異なる場合もある。本書は『浄全』に収録されるまでは刊行されなかったが、近世以降現代に至るまで、浄土宗における三部経理解に多大な影響を与えている。浄土宗三部経解釈の定点の一つとみなし得るものである。


【所収】浄全一四


【参照項目】➡義山素中観徹浄土三部経合讃大雲点


【執筆者:齊藤舜健】